なんか3人でだらだら書いてる

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イノベーションのジレンマ

イノベーションのジレンマという現象がある。

書籍にもなっているので興味を持ったら是非そちらをご覧いただきたい。

 

イノベーションのジレンマとは、業界トップ企業が顧客の意見に耳を傾け、さらに高品質の製品やサービスを提供することでイノベーションに遅れ、失敗を招くという考え方のことである。

 

具体的にガラケースマホの例がいいかもしれない。

日本企業の多くはガラパゴスケータイと言われるように日本独自のケータイ文化を作って来た。寡占産業であり、大手のメーカー・キャリアがそれぞれ日本に多くの顧客を持っていた。

アンテナが付いている画面むき出しのケータイから始まり、折りたたみケータイ、ワンセグ機能、顧客の要望を答えるように次々と機能を拡充させていった。

企業が考えていたことは「今の顧客の満足度をあげるにはどうしたらいいか」「既存顧客を他のキャリアに取られないようにするには(または奪うためには)どのように性能を向上させたらいいか」であろう。

しかし日本企業が既存顧客を逃さないように注力しているうちに、iPhoneをはじめとするスマホ勢が現れた。日本メディアの多くは当時、スマホが流行ることに懐疑的だった。しかし現在スマホは我々の生活を握っている。どうして日本企業はこの変化に対応できなかったのか?これに答えるのがイノベーションのジレンマである。

 

イノベーションのジレンマに陥る原因としてChristensenは3点述べている。

まず第一に破壊的イノベーションの技術は、(特に初期に)性能が低いため大企業が関心を払わずその変化に気付きにくいからである。

おそらく初期のスマホは性能がそこまで高くなかった。赤外線が使えない?!そんなん日本じゃ流行らないよ笑 というのは多くの人が言っていた。

 

 

第二に、最先端の市場技術をうまく使いこなさずに既存顧客の満足度をあげることに終始してしまうからである。技術を駆使して新しい商品・サービスを作ったとしても、それによって確実に新規顧客に刺さるかどうかは分からない。であるなら、現在確実にお金を落としてくれている顧客の満足度をあげることに注力したほうがいい。

 

 

第三に、投資に値するほどの市場規模でないため参入するタイミングを逃すからである。新規市場は新規であるがゆえに市場規模がゼロもしくはかなり小さい。不確実な市場に投資するよりも、上記のような既存の大きな市場を伸ばすほうが社内の支持も得られやすい。

 

 

そうしてモタモタしているうちに、新規の商品・サービスが顧客の新規ニーズ・シーズ(ウォンツ)に答えることで既存市場を破壊する。

 

 

よく言われるベンチャー・スタートアップのセオリーは、

・大企業の参入しないような規模の小さい市場に参入する

・大企業が模倣したら自分の首を絞めるような事業を行う(バイト掲載サイトのジョブセンス(現マッハバイト)がいい例)。ちなみに「合成の誤謬(fallacy of composition)」と言う。

・大企業が参入後追いつけないくらいのスピード感を持って事業を進める

である。

 

これはイノベーションのジレンマからの考察であり、その通りだと思う。

 

 

 

 

先日、某キー局で働く友達と話している時にAbema TVのことを聞いてみた。すると

「あーAbemaね、キー局と比べるとまだ全然規模もないし、」

「今の人は全然テレビみないと言っても、まだ全然大丈夫だよ」

「社内だとAbemaの話題が出たことすらない」

「それよりも他のキー局とのこと考えなきゃいけないし、自社コンテンツのことでいっぱいいっぱい」

と言っていた。あっこれイノベーションのジレンマじゃん…って思った。

 

 

電子書籍もそうだし、スマホもそう。多分馬が最高の交通手段だった時に生まれた自動車もそう。みんな最初は理解されなかった。

 

 

合成の誤謬が意味するところは、「パーツで見たら非合理だけど、全体で見たらなぜか合理的」である。パーツしか見ない人にとっては非合理でそんなの成功するとは思えない。だけどビジネスモデルを全体像で見たり、社会・テクノロジーの変化を「点」ではなく「線」で見た時に初めてその非合理さに意味を見出せる。


これは持論だけど、新しいテクノロジーやそれを用いたサービスが生まれ、多くの「普通の人」が反対するようなものにこそ「賭け」たほうがいい。特に既存業界にどっぷり浸かった人から見たら、既存の慣習に囚われているので無意識的に拒絶反応を起こす。(恐らく自分でそれを認めるのが嫌だという深層心理がある)

普通の人も合成の誤謬を考慮していない。あれっ?と思ったら全体像や社会・テクノロジーの推移をよく観察する。

 

世界で初めて自動車を大量生産したヘンリーフォードは言った。

「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう。」

馬は手段である。インサイトを観察し、顧客が求めるものを既存の考えに縛られずに作らなければいけない。

 

参考文献

クレイトン・クリステンセン (著), 玉田 俊平太 (監修), 伊豆原 弓 (翻訳)(2001)『イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき 』翔泳社

http://amzn.asia/02Kiq7j

 

 

おぐ